美しく生きるということ――がんサバイバーの1人として

§2 乳がんは心と体に深い傷を残す


前ページでも述べましたが、もともと私は、20代の頃に起業した女性用下着を中心とした美容・衣料関係の会社を経営していました。

一時は、日本全国に数百もの取扱い店ができて、アジア諸国にも進出するまで規模が拡大していました。また私自身、女性経営者として注目を集め、美を演出する「ボディプロフェッサー」としてテレビにも出演していました。(このあたりのことは、「“美しさ”への気づき」ページで詳しく紹介しているので、そちらをご一読ください。)

美しくありたい、美しく生きたいという女性の気持ちに応えたいという思いで始めた事業ですが、そのなかで、病気で苦しむ女性を支援するためのメディカルファンデーションというプロジェクトを推進したことがありました。とくに力を入れたのが、乳がんで乳房を切除した女性をサポートできるようなブラジャーの開発でした。

 その時、乳がんに苦しむ人の話をたくさん聞きました。闘病中はもちろん、たとえ腫瘍の切除に成功したとしても、乳がんは女性の心と体に深い傷を残します。手術痕の痛み、リンパ切除による浮腫、片方の乳房がないことによるバランスの崩れ、そして何よりも「自分が醜くなってしまったのではないか…」という深い悲しみ…。それでも母として、妻として、子供や夫の前ではつらい顔はできない、笑顔でいなければならない――話を聞きながら、同じ女性として涙が出ました。

たとえがんは消えていたとしても、心は癒されていないのです。なんとかしてあげたい、自信を取り戻してほしい――それがメディカルファンデーション開発にかけた思いでした。

乳がんの大きさや手術方法によって、切除の痕は人それぞれです。私は一人ひとり話を聞きながら、それぞれの状態にあわせて医療用ブラジャーを作りました。そうしてできた物を「あなたはまだまだキレイですよ」「大丈夫ですよ」と言って手渡しました。みなさん泣きながら嬉しそうに受け取ってくださいました。

ただ、どんなに手を尽くし心を尽くして作っても、メディカルファンデーションには限界があります。そのブラジャーを外してしまえば、元の姿に戻ってしまうという虚しさは、どうしようもありません。