美しく生きるということ――がんサバイバーの1人として

§3 がん最先端治療の臨床現場で起こっていること


 どうせなら切らずに治すことができれば…そんな悔しさが渦巻いている時に、その私の気持ちを知る友人が、ある一人の医学研究者・ローフェン(Luo Feng)博士を紹介してくれました。ローフェン博士は、中国系アメリカ人で、当時最先端の治療法として注目を集めていたがん遺伝子治療剤開発の第一人者でした。

ローフェン博士の話から、遺伝子治療の開発が進めば、乳がんはもちろん、多くのがんを切らずに治せるようになる可能性を感じましたが、「それが本当なら素晴らしいことだろうけど…」と、半信半疑でもありました。

実際、「これでがんが治る!」というような話は、いくらでも巷にあふれています。なかには怪しいものも少なくありません。

紹介してくれた友人は信用できる人なので、とにかく本当のところはどうなのか、この目で確かめてみたいと言ったら、近々日本初の自由診療による臨床研究が行われるというので、その現場に立ち会うことになったのです。2006年春のことでした。

その頃はまだ医学的な知識もあまりなかったので詳しいことは分かりませんが、その場で起こっていることを目の当たりにして、率直に驚いたことを覚えています。がん治療の未来に、とても希望を感じました。

ただ当時は、それを事業として取り組もうという意識は全くありませんでした。ファンデーション事業が順調に伸びていたし、何よりも医療は自分の専門外だと思っていたからです。

それでも、とにかくがんで苦しむ人の助けになってほしいという願いから、研究開発のための資金援助を申し出たのです。