美しく生きるということ――がんサバイバーの1人として

§6 がんは終わりではなく始まりだった


衣料業界から医療業界へと全く違う分野に踏み出したことに対して、当初は多くの人が「素人の部外者にはムリだろう…」と、ネガティブな反応を示しました。

ところが自分自身が乳がんになったことで、部外者ではなく文字通り当事者になりました。がん患者の心理や痛みを内側から語ることができます。

同時に、がん最先端治療をライフワークとして人生を賭けて取り組んできた私には、治療される側と、治療する側両方の立場に寄り添うことができるという自負があります。

そういった意味では、乳がんになったことはまさに天の計らいだったとしか考えられないのです。私にとってがんは、終わりではなく、むしろ始まりでした。

 自分の体で体験した治療内容やその効果、副作用、現在の状態など、率直にそのまま語ることで真剣に耳を傾けてくれる人が徐々に増えていきました。素晴らしい人脈もでき、資金も集まり出して、乳がんになってから2年後に、ようやく法人化に漕ぎつけることができたのでした。

社名は「株式会社GENE REMEDY(ジーンレメディ)研究所」。GENEは遺伝子、REMEDYは療法・治療という意味です。がん治療の研究を支援し、実際に効果があるものを慎重に選別し、普及させ、できるだけ多くの患者さんのもとに届けたい――それがこの会社の企業理念です。

社名は「遺伝子治療」ではありますが、それにこだわらず良いと思われるものはどんな方法でも研究、検証しつつ、常に理想的ながん治療法を追究していきたいと考えています。実際、いま最も効果的であると注目を集めている免疫治療の研究、臨床にも力を入れています。

2019年1月には、その最先端医療を臨床の現場で提供するためのクリニックも開設しました。東京・四谷三丁目の「TPCクリニック」です。TPCには「Tokyo PreCision(精密・高精度)」という意味も込められていて、その名前のごとく、最先端かつ高精度の医療技術を駆使して、その時点で最高の治療を提供したいと考えています。

さらに私自身の闘病経験から、スタッフには、患者さんの不安や要望、気持ちに寄り添いながら、共にがんと闘う心強い同士となってほしいと伝えています。治療を終えてお帰りいただくときは、治癒への希望をもっていただけるように一人ひとりの患者さまを心からの笑顔でお見送りします。

日本が世界に誇る「おもてなし」ですが、私たちの場合、それは単なるサービスや儀礼的な「おもてなし」ではありません。治療への意欲や希望的感情、笑うこと、リラックスなどは免疫力を高め、がんの抑制に効果的であることが医学的にも証明されています。

患者さんに寄り添い、励まし、元気づけることは、大切な治療の一環であると私たちは考えています。